ジャーナル収録基準

*2009年8月 編者により更新

データベース出版会社としてトムソン・ロイターの目指す基本的な使命は、世界で最も重要でかつ影響力の高い研究成果を幅広く収集することです。トムソン・ロイターのデータベースには、現在、自然科学、社会科学、人文科学系の学術雑誌、書籍、会議録が16,000点以上も収録されています。

トムソン・ロイター データベースで重要な役割を果たしているのが、世界各国から収集される学術雑誌で、その数は12,500誌以上(2015年12月現在)にものぼります。各ジャーナルには、英語による著者抄録、著者名、発行者、著者の所属機関名、出版者住所、引用文献など、項目ごとの詳細な索引が付けられています。

トムソン・ロイターの目的は、ジャーナル購読者の現在の問題意識と遡及的な情報検索ニーズに対応するために、世界で最も重要でかつ影響力の高いジャーナルを包括的に収録することです。ただし、ここでいう「包括的」というのは、必ずしも「すべてを網羅する」という意味ではありません。1

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なぜ選択的か?
たとえば、自然科学系ジャーナルの索引を作成する場合、これを包括的にカバーするためには、出版されている自然科学系ジャーナルをすべて収集しなければならないと考えるかもしれません。しかし、このような方法は経済的に実現不可能であるだけではなく、以下で紹介する引用分析が示すように、その必要性がないのです。科学における重要な成果の大半は、比較的少数の雑誌群によりカバーされていることが知られています。この原理は、ブラッドフォードの法則と呼ばれます。2

ブラッドフォードは1930年代の中ごろ、自然科学系のどの分野においても中心的な役割を果たす文献は、1,000点以下のジャーナルでカバーされていることに気がつきました。この1,000点のジャーナルについて特定のテーマへの関連性を調べると、関連性の高いものはかなり少なく、関連性の低いもののほうが多いこと、さらに、特定のテーマへの関連性の低いものは、通常、別の分野との関連性が高いことがわかりました。つまり、自然科学系の分野ではまず中核となる文献があり、その周辺にさまざまなテーマに関連した文献があり、個々のジャーナルは何らかの関連性のあるテーマを扱っているといえます。そこで、ブラッドフォードは、どの分野に対してもコアとなる少数のジャーナルがあり、重要な論文の大半は、比較的少数のジャーナルによってカバーされていると考えました。3

最近の引用分析によると、多くても150誌程度の雑誌が、引用実績全体の半分、および出版実績全体の4分の1を占めているとのことです。さらに、引用された記事の95%、出版された記事の85%が約2,000点のジャーナルでカバーされていることもわかりました。4 このような中核となるジャーナル群は決して不変ではなく、その構成は絶えず変化しています。トムソン・ロイターの編集チームの使命は、次々に登場する新しいジャーナルを評価して、購読者に役立つ有望なジャーナルを拾い上げ、あまり役立たないと思われるジャーナルを取り除くことです。


評価プロセス
トムソン・ロイターは、ジャーナルの評価と選定にかかわる作業を継続的に実施し、トムソン・ロイター データベースへのジャーナルの追加と削除を2週間ごとに行っています。年間に評価するジャーナルは2,000点近くになりますが、採択されるのはそのうち10%-12%にすぎません。トムソン・ロイター製品に登録済みのジャーナルも常に評価対象になります。このようにすでに登録されているジャーナルも評価対象とし、それが収録されているトムソン・ロイター製品との明確な関連性と高い水準を維持しているかどうかがチェックされます。

個々のジャーナルは、綿密な評価プロセスを経てから、収録の可否が決定されます。評価を担当するトムソン・ロイター編集者は、各専門分野における学歴はもちろん、情報科学における経験と教育を兼ね備えています。また、必要に応じて評価プロセスに参加するアドバイザーから意見を聞くことにより担当分野の知識を広げていきます。

ジャーナルの評価では、定性評価から定量評価に至るまで、さまざまな要素が考慮されます。ジャーナルの基本的な発行基準、編集の内容、著者の国際性、引用データなどがすべて考慮の対象になります。どれか1つの要素だけで決めることはありません。複数の要素を組み合わせて相互関係を検証することにより、ジャーナルの長所と短所を特定します。


基本的なジャーナル発行基準
ジャーナルが定められた期日どおりに発行されているかどうかは、評価プロセスにおける最も基本的な評価基準の1つであり、最も重要であると言えます。トムソン・ロイター データベースに登録する際には、まず、対象となるジャーナルが規定の発行頻度で実際に出版されているかどうかを調べます。定期的な出版期日が厳守されていれば、出版の存続に十分な原稿量がストックされていることがうかがわれます。ジャーナルに記載された発行日より数週間あるいは数ヶ月も遅れて発行されているジャーナルは排除されます。5予定通りに発行されているかどうか適切に判断するため、収録の決定は、1号だけで判断されることはなく、通常少なくとも3号について調査されます。

トムソン・ロイターは、ジャーナルが国際的な編集基準に準拠しているかどうかも考慮します。国際的な編集慣例に従っていれば、論文がより検索しやすくなるといえます。こういった基準に含まれるものとしては、適切に内容を表しているジャーナルタイトルや、解説的な論文タイトルと抄録、引用文献の完全な書誌事項、すべての著者アドレスの明示、などがあげられます。

英文による論文タイトル、抄録、キーワードは、必ず付与されていなければなりません。引用文献リストも英語で記述することを推奨します。重要な科学情報は、必ずしも英語だけで発表されているわけではありませんが、できるだけ多くの人に読んでもらうようにするには、記事のタイトル、抄録、著者によるキーワードは英語で提供されていなければなりません。実際の問題として、トムソン・ロイターが翻訳作業を行うことは不可能です。

ピア・レビューの有無も、そのジャーナルの水準を示すとともに、そこに掲載される研究内容の質や引用文献リストの完全性が目安となります。6


ジャーナルの内容
科学文献の中核となる部分は、かなり少数のジャーナル群に集約されます。しかし、研究活動の進展に伴い、新たな研究テーマが生まれていき、そういったテーマの研究成果が臨界点に達すると、新しいジャーナルが登場します。トムソン・ロイターの編集者は、新たに登場したジャーナルの内容がデータベースをより豊かにしてくれるのか、あるいはすでにそのトピックはカバーされているのかどうか、といった点を見極めます。

トムソン・ロイターの編集チームは、膨大な量のデータを駆使し、新たに発行されたジャーナルについてはそのほとんどすべてに目を通して、新たに登場してくる研究テーマや「ホット」な研究分野を素早く見つけ出しています。


国際的な多様性
ジャーナルの発行地域も考慮されます。世界に広がるユーザーのニーズに対応するために、トムソン・ロイターは論文とその引用文献の両方において国際性のあるジャーナルの収録にも努めています。

科学研究の地球的広がりを的確に反映し、バランスよく各分野をカバーできるように、トムソン・ロイターは各地域や国で最良のジャーナルの収録にも努めています。こうした地域性のあるジャーナルについては、該当する分野の他のジャーナルすべてと比較するのでなく、同じ地域内の同分野のジャーナルと比較して判断しています。高度な出版水準、特に、ジャーナルの定期性と書誌項目の英語による記述は必須の条件です。


引用分析
トムソン・ロイター評価プロセスの特徴は、その過程で編集担当者が膨大な引用データを自由に扱えることです。ジャーナルの評価において引用データの適切な解釈と理解が重要であるということは、どんなに強調してもしすぎることはありません。分野によってジャーナル数は大きく異なるため、分野毎の引用率も非常に異なってきます。植物学や数学のように規模の小さな分野では、生物工学や遺伝学のような分野より、論文の数も引用の回数も少なくなります。同様に、芸術を含む人文系の分野では、論文が発表されてから注目を浴びて引用されるようになるまで、かなり長い時間がかかります。一方、生命科学などの分野では、発表からわずか2,3年で引用のピークに達することも珍しくありません。引用データを正しく取り扱うためには、このような事情を考慮しなければなりません。

ジャーナル選定プロセスで使われる引用データには以下のようなものがあります。すでに出版されて久しいジャーナルの場合は、総被引用数(citation rate)、インパクト・ファクター(impact factor、文献引用影響率)、最新文献指数(immediacy index)が考慮されます。新規登場のジャーナルの場合は、ジャーナルの著者と編集委員の出版実績を調べて、それらがどこで出版されたのか、他の著者から引用されているかどうか、などに注目します。トムソン・ロイターでは、収録している8,700点のジャーナルについて引用された文献をすべて記録しているので、それらのジャーナルに引用されていれば未収録のジャーナルについても引用情報が入手できるのです。


自誌引用
自誌引用率(Self-citation rate)も考慮されます。自誌引用率は、自誌を含めた全ジャーナルからの被引用数に対する、そのジャーナル自身からの引用の割合です。 例えば、 Xというジャーナルが15,000回引用されているうち、2,000回が自誌引用であったとします。この場合、自誌引用率は、2,000÷15,000=13.3%となります。 ジャーナルの自誌引用率は、その分野について何かを示唆していると言えます。自誌引用率が高ければその分野は狭いか、他から孤立しているかもしれません。また、学際的なジャーナルは自誌引用率が低い傾向があります。

JCR Science Edition に収録されるジャーナルの80%は、自誌引用率が20%以下ですが、各分野によって自誌引用率の平均は異なります。非常に明白なこの平均値から大きく逸脱していれば、インパクトファクター値を上げるために過剰な自誌引用が行われていないか、分野の状況から考えて高い自誌引用率が普通であるかどうかなど、弊社での評価対象となります。


社会科学と人文学
社会科学のジャーナルは自然科学のジャーナルと同様の評価を受けます。出版水準、ジャーナルの内容、国際的な多様性、引用データなどがすべて考慮の対象になります。通常、社会科学のジャーナルは、自然科学のジャーナルよりもインパクトファクターや総被引用数が低いということを念頭におきつつ、標準的な引用分析手法が用いられます。自然科学でも社会科学でも、引用動向は増加-ピーク-減少という一定のパターンをたどる傾向があります。

出版期日の厳守などの編集基準は、人文学のジャーナルを評価する上でも重要な要素です。しかし、人文学における引用動向は、社会科学や自然科学のように予測可能なパターンにそっているとは必ずしも言えません。例えば、19世紀のロマン派小説に関する論文の被引用数は、はじめはゆっくりと生じ、このトピックに対する関心の移り変わりに応じて上下しながら減っていきます。また、人文学のジャーナルでは、雑誌以外の文献(単行書、音楽作品、美術・文芸作品など)が頻繁に引用されます。結果的に引用データは、時には役立つこともありますが、人文学のジャーナル評価ではそれほどではないのです。

人文学のジャーナルは、弊社の人文学の索引を作成するスタッフの協力のもとに専門の編集者によって選択されます。その目指すところは、幅広い分野にわたる文化現象の複雑さを反映する、優れた人文学のジャーナルを収集することです。


電子ジャーナル
繰り返しになりますが、トムソン・ロイターの基本的な使命は、世界で最も重要で影響力の高いジャーナルへのアクセスを提供することです。この方針は、電子ジャーナルの評価と収録にも適用されます。

電子ジャーナルに対しても、冊子体のジャーナルと同じ厳格な選択基準が適用されます。出版水準、ジャーナルの内容、国際的な多様性、引用分析がすべて考慮されます。

出版期日の厳守については、少し異なる考え方をしています。冊子体のジャーナルは、多数の記事をまとめて1つの「号」として出版されますが、電子ジャーナルは論文ごとに発行されることがあるからです。この場合トムソン・ロイターでは、論文が安定して発行されているかどうか、数ヶ月にわたって見極めます。

電子ジャーナルのフォーマットは、トムソン・ロイターにとって非常に重要な要素です。電子ジャーナルのフォーマットに関するガイドラインを以下に紹介します。このガイドラインに準拠していれば、収録論文の正確な引用が保証され、曖昧に引用されるのを防ぐことができます。

以下の要素が容易に判定できるようにしてください:

ジャーナル名
出版年
巻/号数(必要に応じて)
論文タイトル
ページ番号または記事番号(どちらか一方が必須。記事番号はDOIとは異なるものでなければならない)
記事番号とページ番号の両方を含める場合は、まとめて表記せず、個別に書き分けること。
良い例:Art. #23, pp. 6-10
悪い例:23.6-23.10
すべての著者名とそのアドレス
記事の識別コードと、その種別
例:DOI、PII、記事番号
ジャーナル各号の完全な目次
(記事が1つだけの号以外は、記事ごとにページ番号または記事番号を明示する)
引用される論文と引用する側の論文の両方で、これらの同じ識別コードを明示的に使用すれば、それらを参照する人々も適切に利用できますし、トムソン・ロイターのような抄録・索引業者もそれらを正しく表示できます。

どの記事にも、同じ号(issue)内で一意に識別できるページ番号または記事番号(どちらでも可)を割り当てる必要があります。記事番号は同じ巻(volume)内で重複があってはなりません。同じ巻の各号で同じ記事番号が使われていると、あいまいな引用を許してしまいます。たとえば、/V 20, art. 1, May 2002/と記述した場合、/V 20, art. 1 June 2002/があれば、(著者名が記されていたとしても)どちらの記事を引用しているのか特定が煩雑になります。このような記事番号の重複は避けなければなりません。

電子ジャーナルの引用
電子ジャーナルの発行者は、その電子ジャーナルを引用する際には以下の情報を含むよう指示してください。

ジャーナル名
(統一された省略名称を使用すること。ほかのジャーナルと混乱するような省略名称は避けてください)
巻番号(必要があれば)
号番号(必要があれば。表示の際は括弧で囲むこと)
ページ番号または記事番号、あるいはその両方(それだけで記事を一意に特定できる番号)
出版年

ジャーナル申請・推薦フォーム
ジャーナル申請フォーム(英語でご記入ください)
http://science.thomsonreuters.com/info/journalsubmission/
ジャーナル推薦フォーム(英語でご記入ください)
http://science.thomsonreuters.com/info/journalsubmission/

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脚注
この広報資料は、トムソン・ロイターで編集開発担当ディレクタのJames Testaが作成しました。<*Special thanks to Editorial Development staff members Maureen Handel, Angela Martello, Mariana Boletta and Ryan Joyce for their input.>電子ジャーナルについては、製品開発マネージャPatricia Brennan氏とデータベース・オペレーション担当シニア・ディレクタBeverly Bartolomeo氏に貴重なアドバイスを得たことを、感謝の意とともに記します。

1. Garfield, E., How ISI Selects Journals for Coverage: Quantitative and Qualitative Considerations. Current Contents, May 28, 1990.

2. Garfield, E., Citation Indexing (New York: John Wiley & Sons, 1979)

3. Ibid.

4.Garfield, E., The Significant Scientific Literature Appears in a Small Core of Journals. The Scientist V10(17), Sept. 2, 1996.

5. Garfield, E., How ISI Selects Journals for Coverage: Quantitative and Qualitative Considerations. Current Contents, May 28, 1990.

6. Ibid.

7. Ibid.

英文オリジナルエッセイは以下のウェブページよりご覧いただけます: http://thomsonreuters.com/products_services/science/free/essays/journal_selection_process/